おもしろコラム1月号2024
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ここを描いていたと思ったら、突然、あらぬ所を描き始め、また違う所を描いていたかと思うと、今度は最初の所に戻ったりする。それでいて、終わってみれば完璧な図面ができている・・・。さらに凄いのが、原稿を描いているとき、話しかけたら、手塚は顔を上げて話はするが、その間も手を休めない。話が終わると、また、原稿に視線を落とし、続きを書き始める・・・と。この話を聞いて、手塚は神かと思いましたね。円谷、三船、手塚・・・。いずれも、名前だけで垂涎ものですが、全部、彼の方からアクションを起こしたわけではないところが凄い話です。          (小説家         渋沢栄一と徳川慶喜渋沢栄一は27歳のとき、十五代将軍・徳川慶喜の弟・昭武に従い、パリ万博使節団の一員として渡欧しています。ただ、使節団などというものは、いつの時代も、とかく、「随員」とは言いながらも、下情に疎い人ばかりで構成されがちなもの。派遣する方も、彼らだけでは不安なことはよくわかっているから、「やっぱり、少しは世慣れた者がいない1月号-141と」・・・ということで、外国人との折衝経験が豊富な栗本鋤雲や、揉め事の調停や会計面での目配りに秀でた渋沢栄一が登用されました。ただ、栄一抜擢の背景にはもう一つ、おそらく、慶喜その人の意向があったと思います。池田平太郎絵:吉田たつちか)202201) /  

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