おもしろコラム5月号
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て頭をよぎりました。でも、すぐに、「いくら何でも、検査手術なんだから、そんなことあるはずがないよな」と思い直し、そのまま、病院に向かいましたが、そのとき、心底にあったものは、間違いなく「まさか、俺が・・・」という根拠のない思いこみでした。)さらに言えば、地震もまた然り。今回の東日本大震災で亡くなった方々は、誰もが翌朝も、翌々朝も、目覚めると同じ日常が続いていると、信じて疑われなかったのではないでしょうか?そう考えれば、藤堂高虎のような戦国武者で無くとも、今日、布団に入るときに明日も同じ生活が続いていると考えることは、単なる思いこみに過ぎないのではと思えて成りません。・・・何だか、保険の勧誘みたいになってきましたね(笑)。もっとも、そう、イチイチ気にしていたのでは、到底、生きていけないのも、また、現代社会の動かし難い現実です。(ユリウス・カエサルは、数々の暗殺の危険に対し、「怯えて生きるよりも死んだ方がマシ」と意に介さなかったとか。)私が言いたいのは、別に保険の心配をしろということではなく、「事」を先送りしてませんか?ということです。先送りとは、明日も、明後日も、いつもと変わらない日常が続いていることが前提なのですから・・・。 「この世に生を受けたるは事を成すが為にあり」と言います。その意味で、藤堂高虎のこの言葉は、平和社会に生きる現代人に、「刹那刹那を疎かにすることなく生きる」ことの意義を問いかけているように思えて成りません。ということで、一献、誘うなら今ですよ、御同輩・・・。   (小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか) 201105/-        5月号-121

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