おもしろコラム5月号
85/183

ただ当時、ケチャップ味のスパゲティがなかったわけではありません。銀座の煉瓦亭には、1921年(大正10年)の時点で「イタリアン」というメニューがあり、本来トマトピューレを使うものでしたが、関東大震災後から戦時中の食料配給制になるまではケチャップを使っていたといいます。ホテルニューグランドの総料理長入江茂忠が目撃した、進駐軍    5月号-84  が食べていたスパゲティは、麺にトマトケチャップを絡ませただけのものですが、入江茂忠はケチャップではなく、トマトペーストや生のトマト、タマネギ、ニンニクなどからソースを作り、さらに炒めたハムやピーマン、マッシュルームを加えてスパゲティと和えたものを「スパゲティ―ナポリタン」と名付けたそうな。さすがホテルの総料理長、本格的です。ただナポリタンの発祥については、他にも諸説あり、ある説によると、ナポリタンはそんな本格的なものではなく、町の洋食店のアイディアではないかという人もいます。終戦後、しばらくして日本でもパスタが大量生産されるようになり、スパゲティにケチャップを混ぜて炒める料理法が広まっていきます。    

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る