おもしろコラム5月号
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「1960年代にはまだ家庭ではスパゲッティはあまり食べられていなかった。イタリア料理店もそれほど多くなかっただまだナポリタンという名称は、一般的ではありませんでした。ケチャップとスパゲティを和えた料理が学校給食で「スパゲティナポリタン」という名称で出されるようになったのは、1970年代になってから。紀行作家の前川健一氏によるとたため、スパゲッティといえば喫茶店や洋食店で食べるもので、家庭でさかんに食べられるようになったのは1970年代か1980年代かもしれない」とのことです。それでも、70~80年代はじめの喫茶店では、スパゲティのメニューはナポリタンとミートソースだけというところがほとんど。ナポリタンはうどんのように柔らかく茹でたスパゲティを、ケチャップなどで和えるだけではなく、焼きそばのように炒めて出しているところが多かったのです。ミートソースは業務用の缶詰を柔らかく茹でた麺に乗せるだけのものでした。それに粉チーズと、80年代になってからはタバスコが付いてきました。 80年代後半になると、グルメブームが起こりイタリア料理を「イタ飯」と呼んで人気となります。この時代になって日本人は、アルデンテという芯が髪の毛一本分残る茹で方を知ることになります。皮肉なことに、このイタ飯ブームのときに、ナポリタンは絶滅の危機に瀕するのです。その理由は、ナポリタンが古臭く本格パスタではないという風潮と、主な提供先であった喫茶店の減少と言われています。そしてナポリタンはレストランや家庭から消えていくと思いきや、90年代から2000年初頭にかけて「やっぱり昔食べたナポリタンは美味しかったよね」と思い出されるようになり、レストランでも「昔懐かしい喫茶店のナポリタ5月号-85         

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