過が思わしくなく、お店を閉めると言うので、引き継いだお店だ。昔取った杵柄とはいえ20年ものブランクがあるうえ、年も 8月号-154 年だからと周囲は引き留めたのだが、友人たちの支えもあって、どうにか続いている。必然的にママと同年代のお客様が主流で、半ば、老人介護施設のリクレーション施設のようだ。元気に老後を過ごすのに効果があるとの思い入れがあるのか、カラオケに果敢に挑戦する輩が少なくない。歌手になればよかったのにと思われるほど上手な人もいれば、昔の音楽教育環境が劣悪だったせいか、いわゆる音痴をむしろ、自慢している元気な老人もいる。自分の得意な歌の題名をびっしり書き込んだ小さなノート を握りしめている人もいるが、選曲の段になって、なかなか歌の題名が出てこなくて困っている人が増えてきた。 うろ覚えの歌でも大丈夫老境をむかえた家人がやっている海辺の小さなカラオケスナック。2年前のコロナの最中、前のママが目の手術経
元のページ ../index.html#154