おもしろコラム 巨椋 修
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  260年続いた江戸時代は、鎖国状態の中で独特の文化を築きました。食文化もしかりで、和食も江戸時代にほぼ完成したといっても過言ではないでしょう。江戸食文化の特徴は他国と違い、支配層である武士階級の活躍はあまりなく、庶民が食文化を発展させたところにあります。以前にも書きましたが、現在海外で人気の和食の多くは江戸時代の食文化で、庶民が作り出したものが中心でした。さきほど挙げた天ぷらは江戸時代では主に屋台で食べられていました。寿司もそうです。そば、うどんもしかり。これらは家庭や高級料亭で食べるものではなく大衆料理でした。明治時代になると、欧米の影響から和食の幅が大きく広がります。すき焼きは牛鍋から変化したと言われていますが、最初は荒くれものや肉体労働者しか食べない下品なものとされていたようです。トンカツは逆に上流階級が晩ば餐さ会かで食べていたフランス料理のコートレットを庶民風に変えたもの。コートレットは英語だとカットレット(Cutlet)、カットレットがカツレツとなり、豚の音読みであるトンとカツが合わさりトンカツと言われるようになりました。明治になり西洋料理が和食に取り入れられることによって、和食は大いに飛躍しましたが、さらなる飛躍が太平洋戦争後です。海外からの流通が良くなり、日本はこれまでにない豊かさを手にいれます。町には世界中の料理店が並び、家庭料理でも今日は和食、明日はイタリアン、あさっては中華と世界中の料理を家庭でも食べるのはおそらく日本くらいかも知れません。江戸時代に和食がほぼ完成し明治と戦後に飛躍した124  んい ん    

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