おもしろコラム 巨椋 修
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込むくらいしか方法がありませんでした。食べ物を、より多様に料理するためには、鍋のような器が必要なのです。もしかしたら土器などを発明する前に、地面に穴を掘り、その穴で火を燃やし、熱くなった穴の土や石の熱を利用して料理をしたかも知れません。これまでは、ただ直火で焼くだけのものであったのが、熱した穴に大きな葉っぱで食べ物を何重にも包み込んだものを入れることで、食べ物をこの野趣あふれる料理法は、いまでも世界中に残っており、世界でもっとも古いオーブン料理といってもよいでしょう。この掘った穴と葉っぱを使った料理と、これまでの直火であぶり焼きした料理の違いは、たんに蒸し焼きができるだけではなく、例えば肉と木の実といった土器が発明されていない時代でも、こういった穴だけでなく、竹筒を利用したものなどもあったことでしょう。貝殻や、亀の甲羅なども器として使われていたようです。また、板状の石を焼いてフライパンのように使ったかも知れません。あるいは、捕らえた野生動物のお腹に、採集してきた植物を詰め込み、丸焼きにすることで、肉はロースト(あぶり焼き)に、お腹に入れた植物は蒸し焼きにして、多様な味を楽しむこともあったことでしょう。この料理法も、現代でも多くの民族に伝わっています。やがて人間は、泥をこねて固め、焼くことによって土器を発明します。いまのところ、人類でもっとも古い土器は、日本の縄文土器だそうで約1万6千年前だそうです。土器など器を発明することで人間は水をお湯に変え、食べ物を煮ることを発見しました。また、一つの器に、いろいろな食材を混ぜ合わせて食べることも、やりやすくなりました。火と器の発明や利用は、まさに料理のはじまりでありました。“”  “”“”   蒸し焼きにすることができるのです。違った種類の食べ物を合わせて料理できるというところにあります。  15

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