おもしろコラム 巨椋 修
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人類は最初野生の動物を狩り、植物を採取することで生きてきました。それが1万6千年~7千年前に、動物馴らしたり飼ったり、植物を植えて育てることをはじめるようになります。多くの人は、人間が農業や牧畜をするのは、より楽に食べ物を獲得するためと思っていることでしょう。しかし最近の研究によると、農業や牧畜をするよりも、狩猟採取生活のほうが、はるかに楽であることがわかってきました。狩猟採取生活では、必要な食べ物を必要なだけとればいいのですが、農業や牧畜をすることで、身分格差が生まれることになります。狩猟採取生活よりも重労働をし、身分格差を作ってまで、人間が農業や牧畜をはじめたのは、おそらくより確実に、食べ物を身近に置いておきたかったからではないかといわれています。牧畜は、人間の食べ残しをあさってくるイヌやブタを家畜化したり、群れで行動するヒツジやヤギ、ウシなどに近づき、馴れさせて利用するということが行われたようです。この農業や牧畜がはじまることで、人間は、自然界に新たな敵を作ることになります。それは、農地を荒らしに来る動物たちと敵対せねばならず、家畜化した動物たちを襲ってくる肉食獣から、家畜を守らねばならなくなった多くの食べ物を貯蓄している者と、そうでない者の農業と動物を飼うということ       “”16

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