おもしろコラム 巨椋 修
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地球人口が400万人を迎えたあたりで、ヒトは革命的な発明をします。それは植物を栽培すること。つまり農業です。それが約1万年前。ほぼ同時期に牧畜もはじまりました。農耕と牧畜は、人類史にとって革命的な出来事でした。それまでのおおらかな生活から、額に汗を流して大地を耕すという『労働』がはじまったのです。田畑があるということは。その土地を守らないといけません。額に汗して育てている作物を、野生動物や勝手にやってきた他の人間に荒らされてはたまったものではありません。牧畜もそうで、一生懸命育てている家畜を、野獣や人間に狩らせるわけにはいかないのです。彼らは武装したり柵で土地を囲うなどして、動物や人間に備えるようになりました。農耕は、作物の『余剰』を生みます。自分たちが食べる以上に作った作物は、他の作物と交換するようになりました。狩猟採集民のように、移動しながら生活するわけではありませんから、人が集まり住む部落ができやがて村になり、町もできるようになりました。この過程で狩猟採集時代になかった貧富の差が生まれたといいます。そして食糧は自分で捕りに行かなくても、村や町で手に入るようになったのです。  狩猟採集をやめて農耕や牧畜をはじめて、人類の生活が楽になったということはありません。前述したように、毎日畑や牧場にいって朝から晩まで働かねばならなくなりました。また、職業の分業もはじまりました。家作りが得意な者は大工に。料理が得意なものは料理人にといった具合にです。人々を支配する王が生まれ、奴隷が生まれました。5000年前、いまの中東地域、イラクのあたりにはじめの文明が生まれます。精密化する料理210        

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