おもしろコラム 巨椋 修
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多くの人類学者は「人間は料理をするようになってから人間になった」といいます。狩猟採集時代から人々は、炉を作ったり、大きな葉でいろいろな食材を包み、焼いた石の上に置き、さらにその上に土をかぶせる蒸し煮を作ったりしていました。前回述べたようにクッキーやパンを作ったり、獲物の内臓を抜き、そこに野菜や香辛料を詰めた料理も作っていたのです。しかし狩猟採集をやめ、町に定住するようになると、いろいろな食材が町に運ばれるようになります。3000年前とされる古代エジプトの壁画に、大きな鍋でフライを揚げている絵が残っています。つまり大量の油で大量のフライを揚げているわけで、もちろん家族で食べるためではないでしょう。商売でフライを売るなりする専門家がいたということです。お酒も大量に作られるようになりました。最初のお酒はワインともビールともいわれています。いまから5000年前、古代エジプトではピラミッドが作られまし    たが、その報酬はなんとビール! ルは10日1度くらいしか飲めないのに、ピラミッド作りを手伝うと、毎日ビールが飲めると、庶民は張り切ってピラミッド建築に参加したんだとか。そのビールも近くにビール工場があって、毎日運ばれていたそうな。5000年前の働く人たちも、現代と同じく働いた後にキューっと一杯やってたんでしょうね。なんでも当時の庶民にとってビー211

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