おもしろコラム 巨椋 修
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で作る味噌という意味です。ジャーナリストの松永和紀さんは1963年生まれですが、著書『メディア・バイアス(光文社新書)』でご自身の母親の言葉を次のように記しています。 「昔の味噌は塩辛くて、今の味噌のような旨味がなかった。手作りの醤油もひどくまずく、市販の醤油を食べられるようになったときには、なんておいしいことかと思った。あんなものを食べる生活にはもう二度と戻りたくない」味噌も醤油も日本の家庭料理にとって基本の調味料ですが、市販の商品が出回るようになるまで、美味しいとは言えなかったようです。さらにまだ流通が乏しかった50年代以前は、食材も少なかったのです。漁村でとれた魚は、冷蔵庫が多くなかった時代、たちまち傷んで食べられなくなります。交通網もそれほど発達していなかったので、遠くに運ぶこともできません。野菜の種類も多くはありませんでした。特に農村では、自分の畑でとれた野菜を漬物にするか、焼いて食べるだけで現在より野菜摂取量は少なかったのです。つまり新鮮な鮮魚や野菜を食べられるのは、漁村や農村のみ、でも流通が発達していませんから、種類は多くありません。どうも昔の料理が美味しかったかどうか疑問に思えてきました。   50年代、日本人はようやくサラダ、つまり生野菜を食べるということ知り始めた時代でもありました。これは人糞肥料を使っていたため、寄生虫を予防するためでもありました。昔の料理は危険だった?220     

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