おもしろコラム 巨椋 修
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コムギに擬態、つまり姿かたちを似せてきたのです。そうすると人間たちがこれまで雑草扱いしていたカラスムギたちを食用に育てるようになったと言われています。  人間が家畜を選んだのではなく、家畜が人間を選んだ。カラスムギが人間に栽培されるためにコムギに擬態したというのが近年言われている学説です。それまでは「進化は自然が、生物に無目的に起きる突然変異を選別し、進化に方向性を与える」という自然選択説(自然淘と汰た説)という仮説が定説とされてきました。それが揺らぎつつあるということです。また脳がない植物たちですが、知性や記憶力があることが最近の研究でわかってきました。人間以外の動物にも当然、知性がありそれらの知性は【進化】や【種の生き残り】をかけて生きており、ある生物学者の言葉を借りれば、生命というのは【進化か絶滅か】で常に戦っているそうです。例えばウィルスを生命とするかどうかは別にして、人体など宿主に入り込んだエイズウィルスなどは、最初、毒性が強すぎてすぐに宿主を殺していましたが、脳がないはずの彼らも「宿主を殺せば自分たちも死ぬ。よって殺さない程度に毒性を弱めて繁殖しよう」という選択をし、現在、医学の発展もあいまってエイズは死なない病気になって現在に至っています。はたして人間の食料になった動植物はいまや野生種が絶滅の危機にあるのをしり目に全世界に広まっているのが事実なのです。と、まあ一見食文化と関係なさそうな事柄をテーマにしましたが、これも食文化研究の一端であったりします。●人間に育てさせるという生き残り戦術227    う  

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