おもしろコラム 巨椋 修
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  日本人が、牛や豚といった家畜を食べる習慣がほとんどなかったことを知る人は多いでしょう。しかし、それに比べて鳥は比較的よく食べられていました。幕末の英雄、坂本龍馬が、襲われる直前に、下僕に軍鶏を買いに行かせて、それを軍鶏鍋にして食べるつもりが、食べる前に暗殺されてしまったのは有名な話しです。やがて明治になり、文明開化ということで、肉食の習慣が欧米から入ってきます。最初は抵抗があった肉食ですが、明治時代になり、牛鍋やトンカツが発明されたりして、少しずつ肉を食べられるようになっていきます。しかし、すぐにお肉大好きになったのではありません。明治16年、豚肉の消費量は日本平均で年間わずかに4グラム。つまり、ほとんどまったく食べていませんでした。大正10年で500グラムを超えたものの、程度でした。現在では11~12キロほど食べているようです。そんな日本人ですが、肉と同じくらい苦手としたものがあるのです。それが『牛乳』でした。万葉の昔、皇族が牛乳を飲んだり、牛乳からチーズのようなものを作ったという記録は残っているものの、一般的日本人は牛乳も乳製品も飲みませんでした。また江戸時代は薬として飲まれることもあったようです。昔から牛乳というものは「牛の子どもが飲むものであって、人間が飲むなど気持ちが悪い」というのが、一般的な日本人の感覚。幕末に欧米人が牛乳を飲みたいと幕府役人に申し出ても「牛の乳は人の飲むものではない」と、肉食への嫌悪以上に、牛乳を飲もうとする欧米人の食文化が理解できなかったようです。日本人はいつから牛乳を飲むようになったのか?26       500グラムといわば、現在のスーパーで1パック程度しか食べておらず、昭和35年になっても、わずかに1.1キログラム

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