おもしろコラム 巨椋 修
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と、各文化、民族で、いか生き残るのにお得であるかで、違う食文化が育ってきたのです。当たり前ですが、生き残るのに損になるような食に限らず、基本的にすべての文化において育ちにくいのです。ただし、文化がホンモノになるためには、損になるもの、無駄なもの、必要不可欠ではなく不必要かも知れないものを、ふんだんに蓄え、その不必要かも知れないものを発展発達させなければなりません。それは美術や芸術、そして美食のような、必ずしも生きるためになくてもいいものを、発展発達させねば真の文化文明とはいえないのです。  美食は王侯貴族大富豪が発展させてきた贅沢な美食もまた、生きるのに必ず必要ではないものです。でも、できれば贅沢をして美味しいものを食べたいもの。好きなもの食べられるのは、王侯貴族や大富豪といった支配階級です。世界的に影響力のある料理、例えば世界5大料理といわれる国々は、どこも大変豊かな国であると同時に王や大富豪が料理を発達させてきました。世界の美食の頂点といっていいフランスは、ルイ王朝があり、フランス料理に絶大な影響を与えたイタリア料理を支えたのは、イタリアの大富豪メディチ家でした。アジアだと、タイ王家のタイ国からはタイ料理。自らを華の中心と考える中華思想を持つ中国も、王朝が宮廷料理を作り贅の限りをつくしました。一方日本の和食も世界3大料理に入るともいわれていますが……、和食を完成近くまで作り上げたのは江戸時代。しかし江戸時代を支配していた武士階級は質素倹約が美学ということで、武士階級は、和食に強い影響は与えていないようです。和食の基本は、江戸時代より前の公家の料理や僧侶の精進料理。それに茶道の懐石料理を経て、庶民の会席料理。さ286 

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