おもしろコラム 巨椋 修
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酵茶です。中国をはじめ日本でも好まれているウーロン茶は半発酵茶。そして日本の緑茶は不発酵茶であり、世界的にみても少数派でかなり珍しいお茶なのです。  日本にお茶が入ってきたのは、奈良時代から平安時代の初期。しかし一部の貴族のみで庶民には広まりませんでした。やがて時代は武士が支配する鎌倉時代。一人のお坊さんが中国からお茶の種子を持ち帰り、喫茶の効能や習慣を広めた人がいました。禅宗の一派である臨済宗の開祖「栄西」です。この禅宗、日本の食文化に大きな影響を与えます。仏教のお坊さんはお肉を食べないという教えがあるため、肉や魚を使わない「精進料理」が発達したのです。たとえばお肉は食べてはいけないけれどやっぱり食べたいとお坊さんも思うわけで、そこで考え出されたのが『もどき料理』です。『もどき』とは似せて作ったという意味。日本料理に出てくる『がんもどき』は鳥の雁(がん)をイメージした食べ物。ほかにも魚のお刺身の代わりにこんにゃくを使うとかがあります。また、日本では喫茶の習慣から『茶道』という文化が誕生します。茶道からは懐石料理が生まれ、現在における料亭料理の基礎が完成していくことになるのです。そしてお茶の時間にはお菓子が付き物ですが、茶道によって和菓子が発達したのはいうまでもありません。いまでこそ茶道は庶民がたしなむことができますが、茶道の大家千利休の頃は、戦国武将や豪商がたしなむものでした。日本文化とお茶298        

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