おもしろコラム 巨椋 修
33/318

家族一人一人、個人用のお箸やお茶碗があるのではないでしょうか?皆さんはそれが普通だと思っているかも知れませんが、この習慣は日本独特のもの。海外で「ぼく用のナイフとフォーク、お父さん用のナイフとフォーク」などと使い分けているところは、まずありません。なぜ、日本ではこのような習慣があるのかというと、一種の宗教的なもので、別の人の食器を使うと何となく「汚い」と思うようなのです。汚い、つまり『他人の食器を使うと穢れる』という意識が、日本人にはあるようなのです。そんな日本人ですから、鍋料理も昔は、みんなで鍋をつつくということは、あまりなく囲炉裏などで大きな鍋を囲む場合でも、料理を取り分けて食べていたと考えられています。  鍋料理が一般に普及したのは、コンロや七輪、火鉢が普及してからでした。つまり料理をする場所が、台所のカマドや流しだけではなく、コンロや七輪、火鉢といったものが、室内に入ってきたというわけです。時代でいうと、江戸時代の終わりころに、おでんや湯豆腐、ちり鍋といったものが登場してきます。明治になると、牛鍋が登場します。しかし、みんなでひとつの鍋をつつく、いまの鍋料理はなかなか普及しませんでした。コンロや七輪、火鉢の普及が一人鍋を普通にした32        

元のページ  ../index.html#33

このブックを見る