おもしろコラム 巨椋 修
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日本料理を圧迫し続けた武士階級       世界の名のある料理というのは、その多くが支配階級の舌や胃袋を満足させるために発達してきたものがほとんどです。しかしなぜか日本の支配者たちは、あまり日本料理の発達に貢献していないのです。お公家さんたちが贅を尽くして楽しむという料理はやがて廃れてしまいましたし、だいたい江戸時代になるとそのお公家さんたちは極貧にあえいでいる状態で、帝でさえ「腐った魚を食べさせられている」とまで言われたくらいでした。いっぽうの現実的に日本を支配していた武士はというと、日本料理の発達に手を貸したというより、むしろ、庶民たちが豪奢な料理を楽しもうとすると圧迫する方が多かったのです。なんといっても武士は食わねど高楊枝、武士たる者質実剛健でなければならぬというのがタテマエ。名君と言われる将軍や大名は、徳川吉宗や上杉鷹山など、とにか倹約令などというものを発行して、料理を43   “” 

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