おもしろコラム 巨椋 修
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貝類ならまずはアワビ。次いでカキ。これらの貝類も、干したものが贈答品として好まれたようです。  では、獣肉はどうでしょう? 食べなくなっていきました。しかし、もちろんまったく食べなかったわけではありません。江戸時代では薬と称して肉を食べていました。戦国時代にヨーロッパからやってきた宣教師ルイス・フロイスは「日本人は野犬や鶴、大猿、猫、生の海藻などを喜ぶ」「我々は犬を食べないで牛を食べるが、彼らは牛を食べずに犬を家庭薬として食べる」と、書き残しています。犬、鶴、大猿、猫……、現代の日本人からみたらギョッとするものばかりですね。当時の日本には牧畜の発想はなく、牛や馬は農耕用や運搬用で、食べることはほとんどありませんでした。養豚も一部の地域では行われていましたが、一般的ではなく、戦国時代の日本人が食べていたのが、野生の動物の肉だったのです。ではここで問題です。中世の日本において、記録に残っている食肉はなんでしょう?答え:タヌキ。え? って思うでしょう。でも記録ではそうなっているのです。タヌキは主に狸汁にして食べていたようです。鳥肉ではなんでしょう。答え:雁(かり)、次いで鶴、その次が白鳥。意外な食べ物ばかりですね。でもこれらは公家や大名の贈答品などの記録からなので、本当のところ圧倒的多数で好まれたお肉は意外にも……日本に仏教が入ってきてから、獣の肉を食べることが禁止されたりして、どんどん47      

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