おもしろコラム 巨椋 修
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握り寿司物語     いまや和食を代表する料理でもある寿司。寿司にはチラシ寿司や、大阪のバッテラ、琵琶湖の鮒寿司といろいろありますが、いまや寿司を聞いて頭に浮かぶのは江戸前の握り寿司でありましょう。握り寿司は江戸時代の後半、写楽や北斎、杉田玄白、平賀源内、小林一茶、など庶民の文化人が多く輩出した文化文政時代に作られたと言われています。文化文政を堅苦しい学者は『ぶんぶん文化時代』ではなく『化成時代』と呼んだ庶民の時代。そんな時代の江戸の町に握り寿司は誕生しました。それまでの寿司は、塩と米で魚を発酵させた食品で、作るのに結構な時間と手間がかかりました。しかし気が短いことで有名な江戸っ子はそんなまったりとしたことを好みません。江戸っ子が蕎麦を好んだのも、サッと茹でてピシャッと冷やし、ズズッの食べられる手軽さからです。それまで時間と手間がかかっていた寿司を、酢飯の上に魚を乗せるだけ手軽に食べられる握り寿司が考え出されたようなのです。寿司は江戸っ子が気軽に食べられる江戸のファーストフードだったのです。江戸のファーストフードだった握りずし61     

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