おもしろコラム 巨椋 修
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  日本人と肉食と牛乳と  これまでも昔の日本人は肉をあまり食べなかったという話しは書いてきました。ある学者が調べたところ、大正時代の日本人における年間のお肉消費量は3.75グラム。かつては肉食をしないと思われていたチンパンジーは、実は狩りをして年間25グラムもの肉を食べるそうですから、いかに昔の日本人が肉を食べなかったのかがわかります。日本人が本格的に肉を食べなくなったのは、江戸時代に入ってからで、特に五代将軍徳川綱吉が行った『生類憐みの令』の時代。それまではヨーロッパや中国ほどではないにしても、それなりに食べていたんです。ただ、日本には牧畜や養豚の習慣がほとんどなかった。必然、食べる肉は野生の動物か、身近に飼っていた犬。戦国時代に日本にやってきた宣教師のルイス・フロイスが「ヨーロッパ人は牝鶏や鶉・パイ・プラモンジュなどを好む。日本人は野犬や鶴・大猿・猫・生の海藻などをよろこぶ」「ヨーロッパ人は犬を食べないで、牛を食べる。日本人は牛を食べず、家庭薬として見事に犬を食べる」と書き残しているくらいです。ところが、江戸時代の『生類憐みの令』で、日本人の肉食の習慣がどっと減りました。大正時代、日本人は肉を4グラムしか食べなかった77    

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