TEBRA通信11月号
139/196

(1)電子制御装置の故障診断 電子制御装置は各部に取り付けられたセンサーからの情報を基にECUが車両の状態を判断し制御を行う。このためセンサーやECUなどに不具合が発生した場合には正しい制御ができなくなる。メカニカル系の故障診断では、不具合の症状と異音や異臭、動作状況などから故障原因を推測するが、電子制御装置ではECUに搭載された自己診断機能の活用が不可欠である。 自己診断機能とは、センサーからの情報をもとに各制御が正常に行われているかECUが確認し、異常が発生した場合その個所を記録し警告灯などを点灯させて運転者に知らせる働きをする。 現在の自動車は排気ガス中の有害成分の削減や省燃費化によるCO2排出量の抑制、安全な自動車運行などのため、様々な部分が電子制御化されており、その機能を維持することが重要になる。このため、2024年10月からは車検時に排ガスなど発散防止や横滑り防止、運転支援などの電子制御装置に対して故障診断機による検査(OBD検査)が実施される。 特にASVと呼ばれる車両では衝突回避のための緊急ブレーキや操舵システムを自動化しており、正しい整備ができなければ誤作動による事故など大きなトラブルが発生する。 これらの整備作業をするには専門の設備機器や知識が必要となるため、2020年4月より電子制御装置整備という新たな認証工場制度がスタートした。 スキャンツール(故障診断機)は車両のOBDⅡ端子に接続することで、自己診断機能によって記録された情報(故障コード)を取り出し、不具合個所を表示する。 電子制御装置の故障診断はスキャンツールを使用して、各種のセンサーやアクチュエーターの不具合、ワイヤ・ハーネスの断線、短絡などを確認しながら原因を究明していく。(2)故障診断の進め方 効率よく診断作業を行うためには、出力された故障コードの分析とともに自動車の構造、機能及び点検方法などの基本を理解し、理論と経験に裏付けられた想像力を生かして不具合現象を把握する従来の故障原因の探求方法を活用することが重要になる。 特に先進安全技術に関連する装置はすべての状況で作動するものではないため、故障探究をする際には事前に先進安全装置の性能限界なのか不具合なのかを判断する材料を準備する必要がある。そのためには不具合現象をはっきりつかみ、系統別に正しい手順を踏んで原因を慎重に究明しなければならない。(3) 先進安全技術に用いられるセンサー類と特性前方障害物検知カメラ 複数のカメラを使う複眼式と単一のカメラを使う単眼式がある。主にフロントガラスの上部、大型トラックなどにあっては、ダッシュボード上に搭載されている。 車両前方をカメラで撮影し、その画像を解析することにより、前方の人や車両及び道路の白線などの情報を得ている。前方の障害物までの距離の測定は、複眼式で左右2つのカメラの視差角を利用して推定するものや別途赤外線レーザーやミリ波レーダーからの情報を基にするものが多い。最近では、撮影した連続する画像における対象物の消失点からの高さや面積の変化を画像処理することで推定するカメラもある。 また、カメラは人間の目と同様に物体が何であるかの判別ができるため、道路標識を認識し運転者に通知できるものもあるが、その半面、光や天候などの影響を受けやすい。一部の最新式のカメラやECUは性能向上により、夜間歩行者などの検知が可能になっている。■単眼カメラ<特徴> ■カメラの画像をコンピューターで解析することにより、前方の車両や歩行者の有無などを判断する。 ■対象物との距離の推定は、別途センサーで測定するか撮影した動画を画像処理することで行うが、その方法は各社様々である。 ■車両や歩行者の識別については得意であるが、距離の測定(推定)に関しては他の方式に比べると一般的に精度は低い。なお、複眼カメラと比較すると劣るが、複数の立体物の大きさ、位置を検出し、走行領域の境界となる白線などの路面上のマークも検出することが可能。4Part1次世代自動車の基礎知識電子制御装置1-1

元のページ  ../index.html#139

このブックを見る