TEBRA通信11月号
9/196

PART1PART2PART3※1  「生態学的視覚論」(J.J.ギブソン著、小崎敬他訳、サイエンス社刊、1985年) P151  「エコロジカルな心の哲学−ギブソンの実在論から」(河野哲也著、勁草書房刊、2003年) P71 「対象はそれが何を為すかwhat it doesを提供する。なぜなら、それが、何を為すかということこそが、それが何であるかwhat it isに他ならないからである」 参照※2 「エコロジカルな心の哲学−ギブソンの実在論から」 P88〜「6 人工物のアフォーダンス」 要約※3 広辞苑(第7版)参照※4 中古車を店頭に並べる前に、ボデー外観とエンジンルーム、室内をきれいにすることを「中古車の商品化」と呼ぶらしい31 ところで、私たちの身の周りのものは、すべて名前と意味を持っており、すべてのものが接し方から意味付けられていること(※1)に気付きます。たとえば郵便ポストは、物理的実体的には「赤く塗られた金属の箱」に間違いはありませんが、普通は「郵便物を投函するための箱」と説明します(※2)。また、リンゴは「バラ科の落葉高木、およびその果実(※3)」という意味で、果物は食べ物の1つであり、人がそれに対して何をすべきかは、「食べろ」と誘われているのですから食べたら良いのです。投函するための箱は投函するように、果物は食べるように働きかけるものなのです。 そこで、研磨処理の目標としての「きれい」も実体としてのきれいではなく、作業者が接し、磨かれる塗膜にどのように働きかけるかという見方から定義し直さなくてはなりません。この観点から定義することで、初めてどのように実行したらそれ(実体としてのきれい)が実現できるかが明確になります。 このように、塗膜研磨にかかわるすべての言葉を「作業者が塗膜に対してどのように働きかけるか」という視点から説明し直し、それを利用して事実や概念を分析していきます。このような分析により、想像やフィクションを排除し、科学的であることを目指しながら、その理論が現実の作業で利用できるものとなります。 塗膜研磨はきれいを目指すものです。目標であるきれいについて考えます。きれいの限界1)なぜ研磨処理するのか? 私たちは、自動車の塗膜を磨きます。鈑金塗装業や製造ラインにおいては、塗装後の塗膜の補修処理として、塗装の不具合(ブツやタレ、肌の不一致)を研磨布紙で整えた跡のペーパー目を消すために研磨します。カーディテーリング業においては、コーティング加工の前処理や中古車の商品化(※4)、納車時の外観の不具合の補修のため研磨します。 これらの磨く理由は、傷やくすみを消してツヤを出す=塗膜をきれいにするためですが、「際限なくきれいになるわけではなく、どこまできれいになるか?」を理解しておくことで、きれいの目標や到達点を定めることができます。PART2 塗膜研磨の体系的考察

元のページ  ../index.html#9

このブックを見る