おもしろコラム1月号2024
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     戦争を知らない時代の老武士が殺気を知る太平の世昔、昭和48年(1973年)に放送されていたテレビドラマに、「大久保彦左衛門」というのがあったのですが、覚えておられますでしょうか。このドラマは、主演の老旗本・大久保彦左衛門に進藤英太郎、魚屋で、その一の子分・一心太助に関口宏という配役だったと思うのですが実はそれほど詳しく覚えておりません。元々このドラマ自体、多分、祖父が見ていただけで私はそれほど熱心に見ていたわけではなく、この回にしても、風呂に入ったか何かでその場面だけを見ただけでしたが、30年以上経った今でもはっきりと記憶に焼き付いているある一場面があります。それは、元武士上がりの魚屋、一心太助が、何かの話で、妻から「どうして、あんたにそんなことがわかるのさ!」と言われ、少し、詰まりながら「そ、そりゃぁ、おまえ、あれだよ、殺気ってやつだ」と。「ふん、あんたに殺気なんてわかるのかい!」「俺だって、元は武士だ。いざって時には、殺気でピピーンとくるのさ」と。で、その夜、太助の家に泥棒が入り、奥さんが気づいて、慌てて、大騒ぎして泥棒を撃退したところ、布団を見れば太助は高いびきで寝ており、怒った奥さんから、「なーにが、殺気だかねぇ」とつねりあげられると。で、場面は変わって、同日同時刻の大久保彦左衛門の屋敷・・・。物音一つしない、大きな座敷で独り寝ていた老武士・大久保彦左衛門が、突然、跳ね起きて、鴨居の上に掛けてあっ1月号-137      

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