おもしろコラム1月号2024
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して、非常に軽率なことですらありました。というのも、明治中期の日本人の平均寿命として、男428歳、女443歳というデータがあり、(以前、我が家の戦前の戸籍で成人の平均寿命をとったところ、結果は55歳。「信長が『人間五十年』と言ってたけど本当に50年だったんだ」と実感しました。)また、江戸時代も「40歳を超えれば息子に家督を譲ってお迎えが来るのを待つ」だったと言いますから、おそらく、官兵衛の時代には40歳弱だったのではないでしょうか。となれば、平均寿命40歳なら、もう20歳の時には子供がいないとまずい計算にな    1月号-144  るわけで、さらに、戦乱の世なれば、父子同時に出陣し、父子同時に戦死ということも十分に起こり得るわけです。こんな時代に大将不在は一族全滅という危険性さえ生じますから、つまり、言葉は悪いですが、予備の男子の存在も必要になるというわけですね。古今東西、多産が繁栄の象徴だった背景がここにあります。もっとも、この平均寿命の数字には実は一つのトリックがあります。当時の短命の大きな要因は、医療技術や衛生観念の違い以前に「栄養価不足」が大きな要因として存在しており、(現代日本人が「バランスのいい食事」などと言っていられるのも、ひとえに冷蔵技術と物流環境の向上あってのこと。本来は、その日にとれた物をその日に食べるしか選択肢は無いわけで、穀類が重宝されたのも保存が利くという一面があったからかと。)であれば、栄養も医療も行き届いた権力者層は、いつの時代 ..  

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