な要素となり、良い水を確保する事が良い酒造りの基本であるといえます。酒蔵が川の近くに多いのも、酒造用水として川の伏流水を汲み上げて用いている事によるものと考えられます。江戸時代より高品質な酒を産出してきた兵庫県南西部の灘(なだ)では海岸沿いに酒蔵が立ち並び、六甲山地に降った雨が花崗岩質の地層をくぐり抜ける間にミネラル分を多く含んで湧き出した宮水(みやみず)と呼ばれる硬水を用いて酒造りを行ってきました。水に含まれるミネラル分は酵母の発酵に関与し、ミネラル分が多い硬水を用ると酵母が活発に働き発酵を促進して風味の濃い酒が出来、逆に軟水を用ると発酵は緩やかに進行して風味の穏やかな酒が出来ると一般に言われています。 1月号-34 これまで酒造りには硬水を用いるのが主流でしたが、近年では軟水で醸した酒の味わいが現代人の味覚に合うと軟水醸造も見直される傾向にあるそうです。政情や消費者の嗜好など時代の流れに伴って静かに変化をとげてきた酒造りの歴史。暦の上では春とはいいながらもまだまだ寒さ厳しい立春過ぎ頃に出回る新酒が新しい季節の訪れと共に楽しみでなりません。 文:現庵絵:吉田たつちか)20071/.
元のページ ../index.html#34