おもしろコラム2月号2024
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桃で厄払い 桜より少し先に咲く桃の花は、日本人に馴染み深い花の一つです。原産は黄河流域の高原地帯で、日本には弥生時代に伝わっていたよう。昔は現代のように果物として愛されたのではなく、主に薬として用いられていました。葉は湿疹や汗疹の治療に用いられ、種は血流を良くするところから婦人病に効果が期待されています。とても薬効が強いからこそ実の品種改良が始まった時期が遅く、明治時代まで果物としての価値はほとんどありませんでした。原産地の中国では、漢方薬としてだけでなく、不老長寿の果実として今も昔も尊ばれているよう。こう書くと、日本では桃の実を軽んじていたように思われますが、そうではありません。桃の実が日本の文献で最初に登場したのは『古事記』です。日本列島を生み出した神様・イザナミとイザナギの永久の別れのエピソードに出てきます。妻であるイザナミが黄泉の国に旅立ち、これを悲しんだ夫のイザナギが彼女を追っていきました。ところ       2月号-130  

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