おもしろコラム2月号2024
94/136

いものに触れたり感じたりした時に大きな感動の渦に巻き込まれるが、私はこれほど景色や眺めに感動したことが今だかつてあっただろうか。バスを降り、純白の大地を踏むことさえも大人ながらにわくわくしてしまった。静かな街の中で真っ白なパノラマの世界を堪能していると、パラパラと雪が降ってきた。しばし頭上を眺めながら、私に向かって降り注がれる雪をじっと見ていると、私が着ている黒のジャケットに雪がチラホラと水玉模様のように吸着していくのが見えた。というより真っ白な空気の中、黒いジャケットの水玉模様が異様に目立っていた。そしてよく見てみると、私の黒いジャケットに小さな可愛い雪の結晶がいくつも連なっていた。雪の結晶なんて小学校の教科書でしか見たこともなく、ましてや肉眼で見えるとも思ってもいなかったため初めは自分の目を疑った。が、やはり色々な形をした雪の結晶だ。まるで蝶のように一瞬だけ私の服にとまって、フッと消えていく。私は何分、いや何十分、ジャケットの袖を眺めていただろう。この雪の結晶を見た日から、色々な物を細かい所まで見る癖がついてしまった。リビングに置いてある観葉植物の一枚の葉を手に取り、眺めていると力強い葉脈が見えた。散歩ルートでいつも見かける樹齢100年の木の幹は硬く細かい入りのサボテンは沢山の鋭い針が均一に並んで私を威嚇しているようだ。何気ない毎日の生活の中で自然の雄大2月号-93さを肌で感じながら、常にあの雪の結晶が脳裏に浮かぶ今日この頃である。しわで覆われていた。窓際にあるお気に ”” 

元のページ  ../index.html#94

このブックを見る