おもしろコラム4月号2020
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りで、少しでも贅沢をする将軍や大名はバカ殿呼ばわりでした。もっとも、武士が質実剛健であるべきというのはタテマエで、ある程度余裕のある武士は、結構享楽に通していたものです。元禄時代を生きた尾張藩の御畳奉行である朝日文左衛門という人は筆まめな人で、膨大な日記を書き残しているのですが、その多くが日々食べたり飲んだりしたことを書き残しています。ある程度裕福であれば、武士は3日に1回だけ出仕すればいいだけのことで、お城に行っても大した仕事があるわけではなく、同僚とお弁当を自慢しあったり、昼間からお酒を飲んだりしていたことが記録されています。しかしそのような武士もいましたが、武士全体を見てみると、決して庶民に比べて特に裕福というわけでもありませんでした。江戸時代の武士の平均所得を調べてみると、中の上程度の農民所得と同じくらいで、ほとんどの武士は内職をしないと武士の体面が保てないどころか、食べていけなかったほどです。ある大名が家臣と城内で話しをするとき「きょうは、体調が優れないので座布団を使うのを許してくれ」と、たかだか座布団すらも遠慮しながら使ったという逸話が残っているくらいです。いっぽう、ヨーロッパや中国の支配者階級は、贅を尽くすことが美徳であり、とにかく贅沢をすればするほど、すごい王様ということになります。(食文化研究家巨椋修絵:そねたあゆみ)134

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