おもしろコラム5月号
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味では、武士の時代の始まりは清盛にこそ求められるのではないでしょうか。ちなみに、その100年以上後に、再び朝廷権力の再復を目指した後醍醐天皇によって鎌倉幕府が倒れたことを思えば、朝廷の勢威がいかに根強かったかがわかるでしょうか。もっとも、皮肉なことに、そのことが武士の時代の定着をいよいよ後押ししたと言え、即ち、後醍醐天皇を吉野に201205追い新たな権力者となった足利尊氏は、反対を押し切り、鎌倉ではなく京都に幕府を開きますが、このことにより武家政権という物はようやく全国区になり得たわけで、    5月号-134  その後、その孫の三代将軍・足利義満の時代になり、朝廷は全国の荘園や公領からの税の徴収を自ら行えず、幕府に依存したことで、朝廷の弱体化は誰の目にも明らかになり、ここに名実ともに武士の時代が成った・・・と。つまり、「ローマは一日にしてならず」と言いますが、清盛、頼朝の時代からここまで実に200年以上の歳月が流れていたわけで、そう考えれば、やはり、武士の時代の最初の扉を開けた・・・という点では清盛にこそ、高い評価を与えるべきだと思います。     (小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか)  -/ 

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