おもしろコラム5月号
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●お茶の効能と危機この禅宗、日本の食文化に大きな影響を与えます。仏教のお坊さんはお肉を食べないという教えがあるため、肉や魚を使わない「精進料理」が発達したのです。たとえばお肉は食べてはいけないけれどやっぱり食べたいとお坊さんも思うわけで、そこで考え出されたのが『もどき料理』です。『もどき』とは似せて作ったという意味。日本料理に出てくる『がんもどき』は鳥の雁(がん)をイメージした食べ物。ほかにも魚のお刺身の代わりにこんにゃくを使うとかがあります。また、日本では喫茶の習慣から『茶道』という文化が誕生します。茶道からは懐石料理が生まれ、現在における料亭料理の基礎が完成していくことになるのです。そしてお茶の時間にはお菓子が付き物ですが、茶道によって和菓子    5月号-54  が発達したのはいうまでもありません。いまでこそ茶道は庶民がたしなむことができますが、茶道の大家千利休の頃は、戦国武将や豪商がたしなむものでした。それが江戸時代になると、庶民もお茶を楽しむようになります。高価だったお茶は庶民でも手に入るようになり、来客があると「ちょっとお茶でも……」と、気楽に飲めるようになりました。緑茶が日本に入ってきたころ、目覚ましや気付け、疲労回復など薬としても飲まれていたようです。事実、お茶の効能は素晴らしく、ガン、虫歯、食中毒、動脈硬化、脳卒中の予防、ダイエット効果といいことだらけ。私もニンニクを食べた後はすぐにお茶を飲みますが口臭はかなり消えます。そんな日本茶ですが、近年になって問題も出てきています。お茶農家の高齢化、農地の減少など。日本茶は日本の食文化や日本文化を支えているもの。和食にコーヒーや紅茶はいま一つ合いません。つまり日本茶          

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