おもしろコラム5月号
73/183

ここで何か気付きませんか? かったわけではありません。猟師さんなどは、狩った獲物を串にさして直火で焼いて食べたり、囲炉裏や七輪で網焼きにしたこともあったことでしょう。でも、直火でお肉を焼くという文化は育たなかったようです。鉄板や鉄鍋で焼くという文化も育たなかった。明治に入ってからも『牛鍋』や『すき焼き』に見られるように話でも『たぬき汁』は出てきますが『たぬき焼き』は出てきません。また、内蔵料理のことを臓物(ぞうもつ)から「モツ」と呼びますが、日本では「モツ焼き」よりも「モツの煮込み」のほうが一般に広く食されているようです。このように、日本ではお肉は「焼く」よりも「煮る」ほうが一般的で、お肉を直火で焼く『焼肉』が日本の人々に広まるのは戦後になってからのことなのです。お肉を直火で焼くという料理法は、原始時代に人類が火の利用を発見したときに生まれたものでしょう。そして世界中のほとんどの民族がお肉を焼いて食べています。世界には豚や羊の丸焼きもあれば、ステーキやバーベキューもお肉を焼く料理です。しかしいまここでいう『焼肉』とは、いわゆる日本各地にある『焼肉店』で売られている網で焼きタレをつけて食べ『焼肉』のこと。この『焼肉』は、戦後になって日本に広まりました。この料理を広めたのは戦前戦後に日本にやってきた在日の韓国・朝鮮の人たちです。ただタレを付けて食べる『焼肉』は、朝鮮半島にはない料理法でした。元々、朝鮮半島の人たちが食べていたのは『ノビアニ』と言われる料理でした。この『ノビアニ』というのは、醤油、ゴマ油、砂糖などを混ぜ合わせたタレをお肉に漬け込んで焼く料理のことです。古くから朝鮮半島ではこのタレに漬け込んだ肉を台所で焼いた肉を、お皿に盛って食べていたのです。いま、わたしたちが食べる『焼肉』というのは、目の前の網などに自分で焼くというものであり、タレは小皿に入焼く料理というよりも料理でした。昔煮るそうです。お肉を直火で焼く料理がないということ。お肉を直火でまったく焼かな    5月号-72          “””“

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る