おもしろコラム6月号
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        過日、友人二人が、二人とも夜8時に寝るというのを聞いて、ちょっと驚きました。確かに、私ももう十分に、年とともに朝早く目が覚めるようになってはいるのですが、さすがに、夜8時はまだ仕事していますよ。で、ちょっと思ったことがあります。アメリカの鉄鋼王、アンドリュー・カーネギーは、子供の頃、寺の鐘が毎夕8時に鳴ると寝床に入り、鳴りやむ前に寝たとか。カーネギーは1835年、イギリスのスコットランド生まれですから、日本でいえば、高知県出身の三菱財閥創始者、岩崎彌太郎と同年ということになります。つまり、当時は日本に限らずスコットランドに限らず、世界中の大半の人が日没とともに布団に入り、夜が明けると同時に起き出す生活をしていたわけですね。というのも、日没後の灯りには鯨油や菜種油しかなく、どこもそうした油は高価で、庶民には無縁の品でした。しかし、時代の足音は着々と、庶民への灯りに近づいてきます。1859年、アメリカ合衆国ペンシルバニア州で油田発見。既にその13年前に、石油から灯油を精製する技術が紹介されていましたので、油田の発見は、人々に一気に光源としての灯油を普及させることになりました。(灯油は鯨油一ヶ月分の費用で、一年分の灯りが確保できたとか。ちなみに、その石油の精製で財を成したのが、石油王と呼ばれたロックフェラー財閥の創始者、ジョン・ロックフェラー。こちらは1839年、ニューヨーク州リッチフォードの生まれですから、カーネギーと岩崎彌太郎の4歳下、つまり、同世代ということになります。)ちなみに、日本に衝撃を与えたペリー来航は灯油精製技術紹介と油田発見の間の1853年。ペリーが日本に開港を求めた理由の一つに、捕鯨船の物資補給地の確保があったのはこのためで、逆に言えば、石油発見がもう少し早けれ6月号-113夜八時に寝たカーネギー    

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