おもしろコラム6月号
118/187

        今は上司受難の時代だそうですね。ある支店長が、部下を叱責したら、その部下が本社のパワハラ相談室に電話して、逆に支店長のほうが飛ばされた・・・という話もあるとか。じゃあそんなこと言ったら、部下の機嫌を取るばかりで叱らなくていいのか?という声が聞こえてきそうですが、この点でもっとも参考になるのは徳川家康の家臣教育法でしょう。 家康という人は、部下に指示を与えるとき、始めはハキハキと話していたのが、途中から怪しくなってきて、最後は口の奥の方でモゴモゴとなるんだそうです。家臣が「すみません。最後の方がよくわからなかったので、もう一回、お願いします」と言うと、「おお、そうか」と言って、再び話し始めたら、また、途中から怪しくなってきて、やっぱり最後は口の奥でモゴモゴ・・・と。いつの時代もそうですが、上司相手にそう何度も聞き返せるものではないですよ。家臣も仕方ないから、「はぁ」と言って、後は自分なりに解釈して行動に移していたが、それで特に何も言われなかったので、ずっと、そうしていたと。 これすなわち、家康は物事を明確に指示しないことで、家臣自らに考えさせようとしたんですね。当時は今と違って電信設備などありませんから、使いに出た家臣もとっさの判断が求められることがあったわけで。(事実、私の友人の東京の町工場の社長は、福岡にいるときに社員から「エレベーターに閉じ込められました。どうしましょう?」という電話がありました。すべての思考を社長に委ねていると、現代でもこういうことが起こるという好例かと。) ただし、ここで大事なことがあります。それが、「意図したところと違っても怒らない」ってこと。中には、家康の意図と違ってしまったケースもあったはずなんですよ。しかし、家康はそういう場合でも、おそらく、素知らぬ顔6月号-117家康の家臣教育法     

元のページ  ../index.html#118

このブックを見る