おもしろコラム6月号
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  領土の侮れない価値       「オリエント(東洋)国家は領土を欲し、オチデント(西洋)国家は利権を求める傾向がある」とは、以前からよく私が申し上げていることですが、その論で言うならば、この、「利権を追求する」という考え方は国益という点では非常に合理的だと思います。 なぜなら、単純に領土を獲得するという行為は、必ずしも、利益をもたらすと決まっているわけでもないからです。  (結果的には負担の方が大きかったにも関わらず、無邪気なまでに領土獲得に狂奔した帝国日本こそがその好例だったでしょうか。) これらの点を踏まえた上で言うならば、東洋の一員である日本の歴史は、まさしく領土追求の歴史であると言えるのでしょうが、しかし、その日本の歴史にも、少ないながら西洋型の考え方をする人がみうけられます。そのひとりが豊臣秀吉です。 秀吉は、政権獲得の過程において、行きすぎるまでの利権による政権確立を推し進めますが、その結果、天下が確定した後も実は豊臣家の領土は2位の大名とそれほど差が無い・・・・ということになってしまいます。 しかし、その代わりに、あちこちに利権を有することで、財政的にはかなり潤沢な政権運営が可能でとなり、これにより秀吉は覇者としての圧倒的な地位を維持することが出来たわけですが、一方で、やはり、秀吉が死んだ後は、黙っていても収入が得られる「固定資産」の少なさというものが、豊臣家にとっては少々、不利に働いたようにも思えます。 6月号-119そしてまた、一方で、領土を獲得するという行為についても必ずしも、利点がないわけではありません。 動というものは、かなりの部分を地面や海面などの足下に依存しているものだからです。 人間活     

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