おもしろコラム6月号
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にあるとすれば、囲炉裏や暖炉は、暖房にも調理にも使え、さらに照明にも使えるという一石三鳥の家具といっていいでしょう。 暖炉が壁に面して作られているのに対して、囲炉裏は居間の中央に設置されているので、囲炉裏を囲んでの食事となります。家族や仲間が、ひとつの囲炉裏を取り囲み、同じ鍋から食事をしていたのでしょう。これが日本の鍋料理を発達させたと考えられます。 ではなぜ日本は暖炉ではなく囲炉裏だったのか?おそらくヨーロッパは石と煉瓦の家で日本は紙と木と藁(わら)で出来た家という住宅文化事情が関係していると    6月号-64  考えられます。紙と木と藁でできた家ですから、壁に炉を作りにくかったという事情もあります。 囲炉裏の原点は、室内での焚火(たきび)ですが、これにはいくつかのお得な事情がありました。 一家の中心に囲炉裏があれば照明器具であるロウソクも行灯(あんどん)の油もいらず、料理もできてなおかつ暖房になり、囲炉裏を中心に炎や鍋を囲みながら家族のコミュニケーションもとれるのですからいいことづくめといえましょう。 暖炉は煙突があり煙を野外に逃しますが、紙と木と藁でできいてましてや茅葺(かやぶき)が多かった古い日本家屋では、煙を逃すための煙突は特に必要ではなく、むしろ藁葺き屋根なので、防虫になってお得という面と持っています。 囲炉裏の燃料は、裕福な人は煙のでない炭を使いましたが、一般には薪(まき)を使いました。薪は裏の山にいけば、木がたくさんあり無料で手に入るものですから、ヒマのあるときに拾いに行き、適当な太さに割って軒下などに干して乾燥させます。しっかりと乾燥させておかないと、火がつきにくいうえ煙が出すぎてしまうのです。 さきほど、煙は防虫になってお得と書きましたが、それは多少の煙のことであって、江戸時代以前の家屋には煙突       

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