おもしろコラム7月号
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池田平太郎絵:吉田たつちか)200807なかれ残酷なことをやっているもので、ある意味、マキャベリの言う「君主は愛されるより恐れられよ」ではないが、    7月号-136  まあ、権力者の意向が適正に行われる為には、時として、配下の荒くれ兵士どもが震え上がるような、それ以上の残酷なことをしなければ、威令が行われないというところもあるのでしょう。その典型が、中世のイングランド人の傭兵隊長、ジョン・ホークウッドでしょう。この人物は、占領地で部下二人が、捕らえた美しい尼僧を巡ってにらみ合いになったとき、「待て待て、我々の掟では、何事も平等に・・・となっているだろうが」と言いながら、長剣を抜くや、「あ!」っと言う間もなく、その尼僧を頭蓋骨から尾てい骨まで、縦に一刀両断にしてしまったそうです。青ざめる部下たちに向かい、ニコニコ笑いながら、「さあお前たち右でも左でもどちらでも好きな方を選んで良いぞ。これで平等だ」と言ったとか。 「未開の蛮族ほど、恐怖という物に理屈抜きに従順」だということでしょうか・・・。曹操もその点では、無名時代に人相見から、「治世の能吏乱世の奸雄」と言われたという話がありますが、実際に、怒りの余り、一州をまるごと皆殺しにした・・・などという残酷な話には事欠きません。癇癪持ちで、残酷なことをしたことでは曹操以上だと言える織田信長も、行軍中に見かけた障害者に情けを掛ける・・・というエピソードがあります。こういう人達は、何かの拍子に、突然、人間らしい感情が甦るのかもしれませんね。この人たちに限って、残酷さが演技ということはないでしょうから・・・。     (文:小説家   /- 

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