おもしろコラム7月号
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人、普通に紹介されたとか。つまり、当時の日本人には「肉体」という人間の自然な姿に「恥」とか「罪」とかいうものを感じなければならない道理が理解できなかったということですね。まさしく、「楽園を追われる前のアダムとイヴたち」だったのでしょう。ただ、それは主要都市が少なからず日本より緯度的に北にある所が多い西洋人はそもそも保温のために衣服を身につけることが前提であって、高温多湿の日本は本来、「裸文化」なんですよ。まあ、確かに、今の日本人がすべて普通に裸で街を歩いていたら、おそらく、私も含め、最初は幕末の欧米人よろしく、「オーマイガッ!」となるのでしょうが、でも、たぶん、人間の発情というのはそれほど長い時間、持続出来るものではないように思うんですね。つまり、慣れてくる・・・と。結果、やがて、普通に何事も無く、すれ違うようになる・・・と。ちなみに、別のある外国人は、「日本人の尺度によると、単に健康や清潔のためとか、仕事をするのに便利だからということで体を露出するのは、まったく礼儀にそむかないし許されることだが、どんなにちょっぴりであろうと見せつけるために体を露出するのは、まったくもって不謹慎なのである」と書き残していますが、一方で、江戸時代の混浴銭湯も一切、そういう問題が起こらなかったかというとそんなこともなく、幕府は風紀が乱れるという理由でたびたび禁止のお触れを出しております。    (小説家 池田平太郎絵:そねたあゆみ)201507/-  7月号-157

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