おもしろコラム7月号
48/178

●大切にしたい「いただきます」と「ごちそうさま」さんが「さあ、食べよう」と合図を送るシーンなんかがありますね。欧米では「良い食事を」とか「召し上がれ」といった言葉はありますが、「いただきます」といった感謝の気持ちとはちょっと違うようです。合図ですね。イスラムの人たちは「神の名のもとに食事をはじめます」といった意味のことをいうそうです。中国では「いただきます」「ごちそうさま」に類する言葉はありません。食事儀礼、食文化はそれぞれですから、自分たちの常識や礼儀と違うからって、相手を軽んずるのは、かえってそれが失礼にあたります。気をつけたいですね。この記事を読んでいるのは、その多くが日本生まれの日本育ちであることでしょう。と、すれば私たちは、海外ではあまりたい「いただきます」「ごちそうさま」という、これから食べる食べ物や食べ終わったとき、その食べ物に関わってくれた人々、大地や空気(いわば神々)への気持ちを大切にしたいと思うのです。和食は世界遺産に登録されましたが、その中には「いただきます」や「ごちそうさま」といった感謝の気持ちも入っ-      ているのですから。     (文:巨椋修(おぐらおさむ) 食文化研究家)201707    7月号-48  

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る