おもしろコラム8月号
109/146

団だからこそ」と喝破しました。つまり、命がかかった実戦は、平時に机の上で将棋の駒を動かすようなわけにはいかないということでしょうね。(命のやりとりをしている戦場にあっては、普通に行動できただけで英雄だと言います。確かに、銃弾が飛び交う中にあって、普通に歯を磨けたら、それはもう英雄でしょうね。)ところが、率いる人が率いれば、実際の戦場で、「将棋の駒を動かすような」ことが起きてしまうんですね。正面の敵と交戦中、同盟軍の、裏切りにも等しい勝手な撤退により、脇にも敵を抱えることになってしまったスウェーデンの獅子、グスタフ・アドルフは、普通に自軍の一部を「左向け左!」させてこれに当て、自らは正面の優勢な敵に当たり、そのまま、正面も脇も両方撃破してしまったと・・・。普通、同盟軍が戦場を離脱した時点で兵はパニックになりますよ。もっと凄いのがナポレオン。敗走中の自軍の前に、白馬に乗ったナポレオンが姿を現した途端、兵士らは踏みとどまるどころか、360度Uターンして敵に向かって駆け出し、逆に、敵は反転して逃げ出したと。ナポレオンは「余の赴くところ必ず勝つ」と言いましたが、もはやこうなると「伝説」ではなく、「信仰」だったのでしょうね。          (小説家 池田平太郎絵:そねたあゆみ)201908/-  8月号-109

元のページ  ../index.html#109

このブックを見る