おもしろコラム8月号
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れは考え方の違い、タイプの違い・・・ということなのでしょう。ここで、思い出すのが、先般、亡くなったプロ野球の名監督で、名選手でもあった野村克也翁。翁は、現役時代、稼いだ金はその年のうちに派手に使いまくり、シーズンが始まろうとするときにはきれいに使い切ることで、「今年も稼がないとまずい」という危機感を自分に持たせ、その年の活躍に繋げたと。一方、同時期の大投手・村山実翁は、逆に、「その後の生活の保障がないと、ファンに満足してもらえるような思い切ったプレーは出来ない」と思い、現役生活中から不動産経営を始めた・・・と。これは、テスト生として注目されない球団に入った野村と、関西六大学から鳴り物入りで人気球団に入った村山の違い・・・でしょうか。ただ、ノーベル賞作家・川端康成は気に入った美術品があると、それがどれほど高額であろうが前借りしてでも先に買ってしまい、その金を返済するために、追い込まれてから書き始めるということをやっていたと。川端自身は、幼くして両親に死別し、その後も生き別れだった姉、祖母と次々に失うという薄幸な幼少期を送ったとはいえ、元々、川端家自体は、多少、落剥はしていても、鎌倉幕府執権・北条泰時の末裔を自称するほどの名家。金銭的には、彼の本代が嵩んで食べ物を切り詰めたという程度で、その後も普通に一高、東大へと進学していますから、幼くして父を亡くし、病床の母を抱え、幼い頃から新聞配達やアイスキャンディー売りなどのアルバイトをして家計を支え、高校へ進学するのさえやっとだった野村翁とは違うわけで。     (小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか)202008/-  8月号-111

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