おもしろコラム8月号
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井上勝彦絵:吉田たつちか)202008/-   させると、さらに他の遺伝子を用いて幼虫の体を溶かす。幼虫の体はウイルス粒子を無数に含んだ液体となってした    8月号-134  たり落ち、それより下に生い茂る木の葉に付着する。それを食べた他の幼虫がまたウイルスが感染する。そして、この虫を食べた鳥がウイルスを広範囲に伝染させることで、ウイルスが生きながらえる。(ペンシルバニア州立大学の昆虫学者ケリ・フーバー)日本では根絶した狂犬病(海外ではまだ猛威をふるっている)だが、これもウイルスの仕業で、発症した犬は、目についたあらゆる動物にかみつき、ウイルスを感染拡大させる。狂犬病にかかった犬を操っているのはウイルスだという。まるでゾンビのふるまいとそっくりではないか。蝶や鳥、今回のコロナ発症源とされているコウモリなど、自由に飛び回れる動物はウイルスにとって最も都合のいい存在(宿主)だ。ウイルスは人間より前に地球に存在していたという。ウイルスの側にたってみれば、地球の主は我々であり、人間は我々の下僕であるということなのかもしれない。ウイルスが今後も生き延び地球で繁栄するためには、せっかく感染させた人間が死んでしまうのがもっとも困るわけで、死なせてしまった場合は、宿主の選択を誤ったことになるのかもしれない。そういえば、一時期安倍首相関連として騒がれていた愛媛県今治市の加計学園(岡山理科大学獣医学部)はBSEや鳥インフルエンザ対策の一環として設立が認可されたわけだが、今回の新型ウイルスを契機に、大幅に予算を積み増して、ウイルス研究のメッカとして、全国のこの分野の専門家を結集させて、世界的な研究機関としたらどうだろうか。     (ジャーナリスト 

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