おもしろコラム 8月号
179/184

田中角栄人たらしの妙         よく、「あの人は頭が切れる」とか「彼は頭が良い」などと言いますが、そもそも、「頭が良い」とは何でしょう?  –178–この点を、田中角栄は「頭の良さとは記憶力である」と喝破しました。では、彼の記憶力がどういうものだったか。私の「記憶」に残っている話があります。三重県尾鷲市陳情団が角栄を訪問したときのこと。すると、角さんはその場で、尾鷲市のだいたいの地図を書いてみせ、それに、駅と主要道路を書き込み、話が終わると、「この件は今後、何かあれば私の所へ来てください。私が責任を持ちます」と言ったと。いやこれは、誰でもファンになるでしょ。みんな、しびれたんじゃないですか?まあ、それはさておき、地図について言えば、直前に地図を見て大体の所を把握することはできたでしょう。が、それでも、普通、付け焼き刃ではそこまでの芸当はできませんよ。おそらく、彼は各地の自党候補の応援に行くときに、そこが元々、何によって形作られ、どういう経緯を経て、今に至ったのかということを把握していたのだと思います。土建屋の目ですね。でも、数学ができる人の頭の良さなどは記憶力とは違う気がします。とはいえ、そこは数字に抜群の強さを示した角さんだけに。確かに、計算も、先に算出した数字を覚えておいて、それに加減乗除することの繰り返しとみれば、記憶力を基盤としていると言えなくも無いでしょうか。で、それらを踏まえた上で、私が最近思うようになったがあります。それが「頭の良さとは気がつく」ということではないかと。渋沢敬三という人がいます。あの、渋沢栄一の孫ですが、この人が、終戦直後、日銀総裁をしていたとき、GHQ    

元のページ  ../index.html#179

このブックを見る