おもしろコラム8月号
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漬けて発酵させると、日本でいうところの「なれずし」となります。そういうこともあり、やがて日本では魚の塩辛を意味する「鮨(き)」が、やがて「鮨(すし)」になっていったようですね。関西では酸っぱいことを「酸(す)い」と言いますが、「酸い飯(すいいい)」が「すし」となり、やがて「鮨(き)」という漢字をあてたのではないかという説があるようです。その本来、保存食であった「魚の塩辛」や「なれずし」が、やがて変化して酢飯に刺身を乗せて食べる「お寿司」になっていくというのは、食文化のおもしろさと言えましょう。保存食といえば歴史的英雄ナポレオンが、保存食に大いに貢献をしています。ナポレオンは遠征に行くときに兵士に食べさせる糧食に悩んでいました。「何とか兵士に新鮮で美味しいものを食べさせたい」と。そこで新鮮な食べ物を保存するアイディアを1万2000フランの懸賞金で募集したところ、菓子職人のアペールという男が、ガラス瓶を加熱殺菌し、食べ物を空気となるべく遮断する「ビン詰」という方法を考え出しました。これは大変な発明で、まだ腐敗の原因である細菌についてよくわかっていない19世紀はじめに、高温処理と密閉が保存に有効だと証明したのです。ビン詰めはやがて缶詰となり、缶詰からレトルト食品が生まれます。食べ物の保存ひとつとっても食文化っておも/            (巨椋修(おぐらおさむ):食文化研究家しろいですね。    絵:吉田たつちか)    8月号-52  

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