おもしろコラム9月号
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薬物や食品を口にすると、消化・吸収の過程を経るので、消化の段階で有効成分が分解したり、吸収率が悪くて有効な量が吸収されないということがよく起るからです。これに対し、インビボの動物実験はある程度信頼性があると言えます。実際に、生きた動物の体内で消化・吸収の過程を経た上でも効果があったわけですから、人間においても効果を発揮することがかなり期待できます。しかし、動物実験においてもいくつか注意しなければならない点があります。まず、経口投与の実験であるかどうかということです。動物実験では、胃の中へ直接投与する経口投与の他に、お腹や皮下に注射する腹腔内投与や皮下投与などの方法があります。経口投与は誤って気管に入るなどの事故もあるために熟練が必要である上、作業効率も悪いので、腹腔内投与や皮下投与の方がよく実験に用いられる傾向にあります。しかし、医薬品ではない健康食品が注射で使用されることはなく、消化・吸収の段階を経ていないそれらの投与方法では実際に食べて効くかどうかという証明にはなっていないのです。さらに、動物実験には「種差」があるということも気をつけなければいけません。投与する物質と動物の種類によっては、人間と代謝が異なる場合があり、動物では有効であっても人間には効果がなかったり、逆に動物実験では効果がなくても人間では効果を発揮するということがあります。以上まとめますと、信頼できる健康食品を選ぶには、理想的にはヒト試験のデータまで揃ったものが好ましいのですが、①「インビボの動物実験」であり、しかも②「経口投与の実験である」という二つのポイントを満たしたデータを揃えているか否かということを指標にされるとよいのではないでしょうか。        (医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永絵:吉田あゆみ)200109/.    100

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