おもしろコラム9月号
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この辺の両者の心理は、よくわかるような気がします。手塚にしてみれば、みじめでみじめで・・・、とても、やってられないような心境だったでしょうし、担当者にしてみれば「だから、落ち目は嫌なんだ!」だったでしょう。で、結局、間に合わないから、仕方なく、第四作のところに、そのまま、第一作目の作品を掲載したところ、その発売の翌日、出版社である秋田書店の電話と言う電話が鳴りっぱなしになり、出版部だけでは電話の応対が間に合わなくなって、ついには、社員総出で電話を取り捲らなければならないほどだったそうです。内容はすべて、少年チャンピョンに「ブラックジャック第四話」が載らなかった事への苦情。そこで、初めて、担当者は自分の担当している作品が、「どれほど支持されているのかがわかった。」と言っていました。 「人間、泣いてばかりも生きられない。笑ってばかりも生きられない。」これは、重度の鬱病で生命の危険さえあった俳優、竹脇無我に対して、森繁久弥が言った言葉だそうです。漫画界に、はかり知れぬ足跡を残した神様、手塚治虫・・・。何とも人間くさい神様です・・・。人間万事塞翁が馬。/            (文:小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか)139

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