おもしろコラム9月号
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    (小説家 池田平太郎絵:そねたあゆみ)201709向こうでのこと」というのはいささか早計に過ぎる。明治31年に米西戦争によってフィリピンを獲得したアメリカは、フィリピン人に対してもインディアンと同様に対処している。ただ、日本にとって幸運だったのは、まもなく、南北戦争が勃発したことで、アメリカが極東に目を向ける余裕は無くなってしまった。こうなると残る脅威はロシアということになる。不凍港を求めるロシアの南下は日本にとって間違いなく脅威であったが、一方で、イギリスにとっても、ロシアが極東で不凍港を手に入れることは看過できない事態。(対馬に居座ったロシア艦隊をイギリスが追い出してくれたなどというのも、このためで、別にボランティアなどではない。)もちろん、イギリスとしても、遠く極東の海で、インドの支配を危険にさらしてまで、日本を守ってやるつもりはなかっただろうが、イギリス公使館はこの線で本国の了解を得ると、日本を新政府へと導き、後見という形でロシアに睨みを利かせた。第二次世界大戦後、ソ連に対して睨みをきかせたマッカーサーと同じ構図であったろうか。日本は今もこの流れの中に居る。/- 143

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