おもしろコラム9月号
146/182

東条英機が、巣鴨プリズンに収監中に、日系二世の通訳のあまりの行儀の悪さに憤慨し、思わず、「親の顔が見たい」と言ったら、彼は自分の親に「トージョーがパパとママの顔を見たいって言ったよ」と自慢したという笑い話もありますが、世の中には、悪気があるわけでもないのに、どうにも、噛み合わない人というのがいるのですよね。もっとも、不仲のごろつき同士を同じ牢屋に入れておくと、最初は口も聞かないのが、一日経ったらすっかり仲良しになっている・・・という話もあります。明治陸軍のホープと目された長州の桂太郎と薩摩の川上操六は犬猿の仲で、両者の不仲を案じた陸軍上層部が、洋行の際、両者の船室を同じにしたら、着く頃には親友になっていたと。どうやら、男という生き物は、エリートもごろつきも基本的なところは大差ないようで。     (小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか)202009/-  145

元のページ  ../index.html#146

このブックを見る