おもしろコラム9月号
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組。親としては、「堅い仕事に」ということだったようですが、でも、息子は放送時点で失業中。堅い仕事についた結果がこれなら、親は一体、何のために断念させたのか?という気になりました。もっとも、当時は、戦後の生活難の記憶があった時代。「海の物とも山の物ともつかないことをやるより、堅い仕事に」という空気は社会全体にありましたから、親も特別酷いことをしているというつもりもなかったでしょうね。(おそらく、同じことを言ったら、うちの親も同じ対応をしたでしょう。) でも、特撮の神様・円谷英二は、撮影技師になりたかったのに、故郷福島に呼び戻され、家業の麹屋を継がされそうになったとき、配達に出るふりをして、駅前に自転車を乗り捨て、そのまま、東京に出たと言いますから、彼も、そんなに好きだったのなら、諾々として、親に従うのではなく、時間をかけてでも説得するか、飛び出すかくらいすべきだったでしょう。「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、人間、好きでやっているのが一番強いわけですから。         (小説家 池田平太郎絵:吉田たつちか)202208/- 147

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