おもしろコラム9月号
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前回は、妻が亡くなる原因となった「火の神さま」を、伊邪那岐命が手にかけて、そのなきがらからも新しい神さまがたくさん誕生したお話を書きました。妻である伊邪那美命が息を引き取る原因を作ったとはいえ、伊邪那岐命は自分の子どもを自分の手で斬ったということで、日本の神話の残虐さがよくあらわれているなと感じます。しかし裏を返せば伊邪那岐命の妻への愛情がそこまで深かったということで。伊邪那岐命は死者の住む国、すなわち「黄泉の国」へ、伊邪那美命と会うために向かおうとします。いわゆる「この世」と「あの世」との境に、分厚い扉がありました。伊邪那岐命は、そこで妻と対面しますが、そこは真っ暗です。伊邪那岐命は、言います。「わたしたちの国造りはまだ終わっていないので、こちらへ帰ってきてもらえませんか?」すると伊邪那美命は、「わたしはもうこちらの国のものを口に入れてしまったので、ここから出ることはできません。()    『古事記』の神々その6黄泉の国1169

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