おもしろコラム9月号
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た作物は、他の作物と交換するようになりました。狩猟採集民のように、移動しながら生活するわけではありませんから、人が集まり住む部落ができやがて村になり、町もできるようになりました。この過程で狩猟採集時代になかった貧富の差が生まれたといいます。そして食糧は自分で捕りに行かなくても、村や町で手に入るようになったのです。狩猟採集をやめて農耕や牧畜をはじめて、人類の生活が楽になったということはありません。前述したように、毎日畑や牧場にいって朝から晩まで働かねばならなくなりました。また、職業の分業もはじまりました。家作りが得意な者は大工に。料理が得意なものは料理人にといった具合にです。人々を支配する王が生まれ、奴隷が生まれました。5千年前、いまの中東地域、イラクのあたりにはじめの文明が生まれます。多くの人類学者は「人間は料理をするようになってから人間になった」といいます。狩猟採集時代から人々は、炉を作ったり、大きな葉でいろいろな食材を包み、焼いた石の上に置き、さらにその上に土をかぶせる蒸し煮を作ったりしていました。前回述べたようにクッキーやパンを作ったり、獲物の内臓を抜き、そこに野菜や香辛料を詰めた料理も作っていたのです。しかし狩猟採集をやめ、町に定住するようになると、いろいろな食材が町に運ばれるようになります。3千年前とされる古代エジプトの壁画に、大きな鍋でフライを揚げている絵が残っています。つまり大量の油で大量のフライを揚げているわけで、もちろん家族で食べるためではないでしょう。商売でフライを売るなりする専門家がいたということです。お酒も大量に作られるようになりました。最初のお酒はワインともビールともいわれています。●精密化する料理      51

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